絵皿に籠めたレクイエム

こんなCさんご夫婦ですが、深い悲しみを乗り越えてきています。
5年前に愛息を事故で失ったのです。

その時の慟哭は言葉に表せないもので、同じ一人息子を持つ母親としては察するに余りある悲しみでした。当初はどうかなるのではと心配でした。

以来愛息を話題にすることもなく、人前では涙を流すこともなかったCさんですが一昨年あたりから、少しずつ変わってきて人前でも泣けるようになり、自分の時間も作れるようになって、傷口回復の兆しを少し感じられるようになって来ました。

そんな昨年、沖縄漆の第一人者・無形文化財の前田孝允氏に三羽の鶴の絵の作成をお願いしたということを聞きました。多忙な前田氏は、注文は受けないということでしたが、たっての頼みで引き受けて貰い、昨12月にようやく完成したというので、私の今回の沖縄訪問の目的は、この絵皿の拝見にありました。

出来上がった漆絵皿は、「黒漆親子鶴」というタイトル。
黒の漆塗りに、金と螺鈿で親子3羽の鶴の絵柄です。愛息急逝の事情は話していなかったということでしたが、偶然にも子鶴が空を飛び地上の両親を見守っている構図でした。これをみた時ご主人はあまりの衝撃に涙が止まらなかったそうです。

美しい琉球漆で作成された絵皿は、ご両親のレクイエム。きっとその思いは空を飛ぶ愛息に届いたことでしょう。

逆縁の悲しみが癒えることはないかもしれませんが、一つの区切りをつけたCさん夫妻に小さな安らぎ感じられ安堵しました。


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 最終更新: 2016/12/7