生への執念「転移」


猛暑も少しずつ涼しくなって読書の秋の到来。最近2冊の本を読みました。
1冊は私が所属している「読書会」の今月の課題本・中島梓「転移」です。
自分では絶対に買わない、読みたくない闘病記。
才能を惜しまれながら54歳で癌で亡くなった別名栗本薫です。
始めは「暗くて気が進まないな」と思いつつ、
苦手な闘病記をパラパラ眺めて閉じようとしたのですが、
目に飛び込んできた文章の見事さに惹かれ、
とうとう一気に読み込んでしまいました。
末期癌を宣告されながら、日々を最後まで諦めずに戦い抜いた作者の
強さに脱帽です。
抗癌剤の副作用でだるさと癌の激痛に耐えながら
明るく前向きに生きているのです。
ショックを受けたからといって事実は事実。頭の整理がつかないけれど
へたりつつも生きていかなければ
」と
小説を書き、音楽活動をし、お洒落をして、
おいしいお料理を作り、生きることを存分に楽しんでいるのです。
さんさんと光を浴びながら若芽の緑が輝いている幸せ」と綴りながら。
ただし、こんなに覚めた作者でありながら、末期になると
「結局、人は他人のことなどどうでもよいのだ」と
死に直面する自分に対しての、健康な人の理解のいなさを
絶望するくだりがあります。
親しい友であっても、家族であっても、
結局人間はその立場にならないと
死に逝く人の気持ちを思いやることは出来ないのでしょう。
私も親しかったい末期癌の友に、何の励ましもできていなかったことを
改めて自戒しました。
豊かな才能があり、やりたいこともまだまだたくさんあったのに
未練を残しながら逝かねばならなかった作者の心中を思うと
涙が止まりません。
唯一救いと思えるのは優しい夫に恵まれ、母親、息子、友に囲まれていたことでしょう。
夫は「この家では穏やかで優しい声しか聞こえない、
機嫌の良い顔しか見えない、何があっても怖い顔をしない」と
日頃から語っていたそうです。
もしこんな家庭があったらば「夢」です。こころから憧れてしまいます。
作者の本をもっと読みたくなりました。
私にとって、いつまでも心に残るであろう1冊になりそうです。
こんな機会を与えてくれた読書会に感謝。

もう1冊はガラリと変わって平岩弓枝著の「ベトナムの風にのって」。
ベトナムの歴史を背景にして、心が温かく包まれていくような恋愛小説でした。
やっぱり恋は良いですね。こんな切ない想い、恋の切なさ苦しさは、
私にとっては遠い昔に去ってしまいましたが、それでもやっぱり恋はいい!
久しぶりに甘い恋に酔えた小説
私は平井弓枝の甘さ、テンポのゆったり加減が好きでないので
自分で選ぶことはないのですが、
これも友人H子さんからのプレゼント。
本の贈り物は何より嬉しいものです


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 最終更新: 2016/6/6